ミラノ・コルティナ五輪がついに開幕し、雪と氷の祭典に世界中が熱い視線を注いでいますね。
私たちビジネスパーソンにとっても、オリンピックは単なるスポーツイベントではありません。
極限のプレッシャーの中で結果を出し続けるアスリートたちの姿には、仕事やキャリアに通じる多くのヒントが隠されているからです。
自己評価と「市場」の評価は必ずしも一致しない
大会初日の注目種目、スピードスケート女子3000mに登場した堀川桃香選手の結果は、4分08秒32の18位でした。
彼女にとって2度目のオリンピック、そして地元イタリアでの調整で調子が上向いていただけに、この結果は非常に悔しいものだったに違いありません。
レース後の「イタリアに来てから調子があがってきていたので悔しい」という言葉が、その複雑な心境を物語っています。
ここには、私たちが仕事をする上でも直面する、ある種の「残酷な真実」が含まれています。
それは、自分自身の感覚や準備の手応えが、必ずしも最高の結果に直結するわけではないということです。
どれほど入念にプレゼン資料を準備し、完璧だと思って商談に臨んでも、競合他社がそれを上回る提案をすれば負けてしまうのと似ています。
スポーツにおけるタイムや順位は、ビジネスにおける「売上」や「シェア」と同様、絶対的な指標です。
「調子が良かった」という主観的な事実は、残念ながら記録には残りません。
しかし、堀川選手のようなトップアスリートは、このギャップを単なる失敗として片付けることはしません。
自分の感覚と実際の結果の間に、どのようなズレが生じていたのか。
氷の質なのか、メンタルの揺らぎなのか、あるいは戦術のミスなのか。
その原因を冷静に分析することこそが、次なる飛躍への第一歩となるのです。
「感情の損切り」ができる人だけが勝てる
私が今回のニュースで最も感銘を受けたのは、レース直後の堀川選手のコメントでした。
「悔しい思いは今日で最後にして、明日からはしっかり切り替えて」と言い切ったその姿勢です。
これはビジネスの世界でいうところの、見事な「感情の損切り」だと言えるでしょう。
仕事で大きなミスをしたり、期待していたプロジェクトが頓挫したりしたとき、私たちはついその失敗を引きずってしまいがちです。
「あの時あアあしていれば」「なぜうまくいかなかったのか」と過去を嘆いても、状況は1ミリも改善しません。
むしろ、ネガティブな感情を引きずることは、次のパフォーマンスに悪影響を及ぼすリスクさえあります。
堀川選手には、まだこの先に「女子団体パシュート」という重要な種目が控えています。
チーム戦であるパシュートでは、個人のメンタルの不調はチーム全体の足かせになりかねません。
だからこそ、彼女は悔しさを味わう期間に「今日まで」という明確な期限を設けたのです。
優秀なリーダーや経営者も、この切り替えが非常に早いです。
反省は論理的に行い、感情は期限を決めてリセットする。
このプロフェッショナルなマインドセットは、私たちもぜひ見習いたい部分ですね。
成長速度を加速させる「環境」の選び方
堀川選手のキャリアにおける大きな転機として、今季から「teamGOLD」に加入したことが挙げられます。
これは、絶対的なエースである髙木美帆選手を中心としたトップチームです。
彼女は自ら、より厳しい、しかしより高みを目指せる環境へと身を投じました。
ビジネスにおいて、どのような環境に身を置くかは、個人の成長速度を大きく左右します。
自分よりも能力が高い人、圧倒的な実績を持つ人と共に時間を過ごすことは、時としてプレッシャーにもなるでしょう。
しかし、トップレベルの「基準」を肌で感じることは、何物にも代えがたい学習機会となります。
3000mと5000mの日本ジュニア記録を持つ彼女のような才能ある若手が、さらに上のレベルを目指して環境を変える。
この貪欲な姿勢があったからこそ、彼女は今、世界の舞台で戦えているのです。
もし皆さんが現在の職場で「成長が止まっている」と感じているなら、思い切って付き合う人や環境を変えてみるのも一つの手かもしれません。
35歳の金メダリストが示すキャリアの可能性
一方で、優勝したイタリアのF.ロヨブリギダ選手にも注目せずにはいられません。
彼女は35歳という、スピードスケート界ではベテランの域に達している選手です。
しかも、自国開催という凄まじいプレッシャーの中で、オリンピックレコードを叩き出しての金メダルでした。
体力勝負と思われがちなスポーツの世界でも、経験や技術、そしてメンタルの強さが若さを凌駕することがあります。
これは、ビジネスパーソンとしてのキャリアを重ねてきた方々にとって、非常に勇気づけられる事実ではないでしょうか。
年齢を重ねることは、決して衰退ではありません。
様々な修羅場をくぐり抜けてきた経験値は、いざという時の勝負強さとなって現れます。
若い頃のような勢いや体力はなくても、全体を俯瞰する目や、ここぞという時の集中力は、年齢とともに磨かれていくものです。
「35歳での自己ベスト」という事実は、私たちのキャリアにも限界なんてないことを教えてくれています。
最初のつまずきは、成功への伏線になる
オリンピックの初戦というのは、独特の緊張感が漂うものです。
堀川選手にとって今回の18位という結果は、確かに望んだものではなかったかもしれません。
しかし、長い大会期間はまだ始まったばかりです。
ビジネスのプロジェクトでも、キックオフ直後に想定外のトラブルに見舞われることはよくあります。
大切なのは、そのトラブルをどうリカバリーし、最終的なゴールにどう結びつけるかです。
最初のつまずきを、後の成功物語の「伏線」にしてしまえば良いのです。
堀川選手は「パシュートの予選をしっかり走れるように準備したい」と前を向いています。
個人の悔しさをチームへの貢献心に変え、次戦ではきっと素晴らしい滑りを見せてくれるはずです。
私たちも、彼女の粘り強い姿勢からエネルギーをもらい、明日からの仕事に取り組んでいきましょう。
今回のレースは、単なる順位以上の深い学びを与えてくれました。
結果を受け入れ、感情をコントロールし、仲間と共に高みを目指す。
そんなプロフェッショナルの流儀を、ぜひ皆さんのビジネスシーンにも取り入れてみてください。